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九品往生とは|阿弥陀仏の極楽浄土に生まれ変わる時の9つのパターンを詳細解説

ピンクの蓮

浄土教では衆生の生前の行いにより、阿弥陀仏(阿弥陀如来)の極楽浄土に生まれ変わる時のパターンが異なります。

異なるのは「仏や菩薩など対象者を迎えに来るメンバー」や「乗り物」、「極楽国土に生まれ変わった後の待遇」などです。

衆生は生命ある全てのもののこと。人間だけでなく植物、動物など他の生命も含まれる。

これを九品往生(くほんおうじょう)といい、全部で次の9つのパターン(等級)があると観無量寿経に説かれています。

  1. 上品上生(じょうぼんじょうしょう)
  2. 上品中生(じょうぼんちゅうしょう)
  3. 上品下生(じょうぼんげしょう)
  4. 中品上生(ちゅうぼんじょうしょう)
  5. 中品中生(ちゅうぼんちゅうしょう)
  6. 中品下生(ちゅうぼんげしょう)
  7. 下品上生(げぼんじょうしょう)
  8. 下品中生(げぼんちゅうしょう)
  9. 下品下生(げぼんげしょう)

大きく「上品・中品・下品」の3つに分けられ、その中にそれぞれ「上生・中生・下生」がある形です。

阿弥陀聖衆来迎図
阿弥陀聖衆来迎図

上品は勝れた人々、中品は中位の人々、下品は劣った人々となり、上品上生が最高の往生で、下品下生が最も下になります。

わかりやすく言えば、上品がファーストクラス、中品がビジネスクラス、下品がエコノミークラスで、それぞれのクラスに「良い席・普通の席・節約席」があるようなイメージです。

九品往生
九品往生

この記事では、「全文現代語訳 浄土三部経」を元に、九品往生の対象者や来迎(らいごう)の仕方、乗り物、往生後の待遇などについて詳しくまとめました。

来迎は仏が衆生を迎えに来ること。

浄土三部経
浄土三部経

どのような人がファーストクラスになり、どのような人がエコノミーに該当するのか。ぜひ参考にしてみてください。

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上品上生

上品上生(じょうぼんじょうしょう)は「人々の中で最も勝れて極楽往生したいと願う人」のこと。

上品上生は最も善き人。自分が往生するだけでなく、その人の姿は生死流転(しょうじるてん)の闇に点じられた灯火として、衆生の導きとなる。

生死流転は煩悩を捨てられず、解脱することもなく、生死を繰り返して六道(りくどう/ろくどう)を際限なく巡り続けること。

六道は仏教の世界観。衆生が作った善悪の業(カルマ)の結果として輪廻転生する6つの世界。天道・人間道・阿修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道がある。

上品上生の対象者

次の三種の心(三心)を発(おこ)して往生する人が上品上生に当てはまる。

三心詳細
至誠心(しじょうしん)まことの心
深心(じんしん)仏の本願の力を深く信じる心
回向発願心(えこうほつがんしん)行った善の力を振り向けて往生を願う心

また、次の三種の人々も往生できる

  1. 慈悲の心を持ち、不殺生など仏教徒が守るべき諸々の戒(かい)をよく保つ人
  2. 大乗経典を読誦(どくじゅ)する人
  3. 六念を修する人(仏・法・僧の三宝を念じ、持戒・布施・敬天を念じる人)

これらの人々が自分の積み重ねた善根の功徳を他の衆生のためにめぐらし、極楽国土に往生したいという願いを発(おこ)し、1日でも7日でも、幾日でも極楽往生したいと願えば、臨終に極楽国土に往生する。

読誦は声に出してお経を読むこと。

上品上生の来迎の仕方

阿弥陀仏は観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)、大勢至菩薩(だいせいしぼさつ)と共に、

  • 無数の化仏(仏の分身)
  • 百千の比丘(びく/僧)
  • 声聞大衆(しょうもんだいしゅ/修行者たち)
  • 無数の天人・神々

など大勢を従え、七宝(しちほう)の宮殿を現して来迎する。

無量寿経にある七宝は次の通り。

①金
②銀
③瑠璃(るり)
④玻璃(はり)…無色の水晶
⑤硨磲(しゃこ)…シャコガイの殻、または白色系のサンゴ
⑥珊瑚(さんご)
⑦瑪瑙(めのう)

そして阿弥陀仏は大光明を放って上品上生の人を照らし、手をさしのべてその人を迎える。

観世音菩薩と大勢至菩薩は無数の諸菩薩と共に上品上生の人を祝福して詩(讚歎の偈/さんだんのげ)を唱える。

上品上生の乗り物

上品上生の人の乗り物は金剛台。観世音菩薩が上品上生の人を乗せる金剛台を両手にささげてやってくる。

上品上生の人が気づいた時にはすでに金剛台の上に乗っている。そして阿弥陀仏の後に続き、即座に極楽国土に往生する。

上品上生の往生後

上品上生の人が極楽浄土に生まれたら、阿弥陀仏の厳かな諸相を全て見る。諸菩薩の身体の美しさも全て見える。

光明の宝樹の林から尊い御法(みのり/仏法)の声が波のように響き渡り、それがその人の耳に届くと無生法忍(むしょうぼうにん)を悟り、あらゆる執着を離れ、静かな境地に至る。

つまり、上品上生の人が極楽浄土に往生したら、即座に「諸仏が成就された無上の悟りから少しのところの境地」に至ることになる。

無生法忍は一切のものは不生不滅である真理のこと。

そして、上品上生の人はしばらく極楽浄土を離れ、諸仏の教えを受ける。

十方の諸世界に赴き、それぞれの世界の仏の御前に礼し、順次に「必ず未来に仏になれる」と授記(じゅき)されてから、阿弥陀仏の世界に帰還する。

その時には無量百千の陀羅尼門(だらにもん)を得ている。

十方は東・西・南・北・北東・北西・南東・南西・上・下を合わせた10の方向。あらゆる方角、あらゆる場所のこと。

授記は将来必ず仏になれると予言し、証言すること。

陀羅尼は「記憶して忘れない能力」「教えを身につける能力」のこと。

上品中生

上品中生(じょうぼんちゅうしょう)は次のような人を指す。

上品中生の対象者

次の人は上品中生に当てはまる。

必ずしも大乗経典を記憶し、読誦するわけではないが、経典の言葉が意味することを深く理解している。万物は流転し、空である教え、仏法の第一義を聞いても虚しく感じることなく、仏に対して疑念を起こすこともない。広大無辺の教えに恐れや驚きなく、因果の理法を信じ、大乗の教えを誹謗しない。

これらの人々が自分の積み重ねた善根の功徳を他の衆生のためにめぐらし、極楽国土に往生したいと願い求めたら往生する。

上品中生の来迎の仕方

阿弥陀仏は観世音菩薩、大勢至菩薩をはじめ、

  • 無量の聖衆(しょうじゅ)
  • 極楽国土の天人・神々

を従えて来迎する。

聖衆は諸菩薩や声聞(しょうもん)、縁覚(えんがく)、比丘(びく/僧)など聖者の集まり。来迎する阿弥陀仏のお伴(とも)のこと。

声聞は出家の修行者、縁覚は仏の教えによらず独力で十二因縁を観じて理法を悟った者のこと。

上品中生の乗り物

上品中生の人の乗り物は紫金台(しこんだい)

阿弥陀仏が上品中生の人を褒め称え、「あなたは大乗の仏道を修して第一義を悟った。この故にあなたを迎え、極楽浄土に導く。」と宣告すると、阿弥陀仏の千の化仏が一斉に上品中生の人に手を差し伸べる。

上品中生の人が気づいた時にはすでに紫金台に坐し、合掌して諸仏に礼拝している。そして即座に極楽国土の七宝の池の中に生じる

上品中生の往生後

上品中生の人は蓮華の蕾(つぼみ)のような形をしている紫金台の中で一夜を過ごす

夜が明けるとその蕾が開花し、上品中生の人の身は紫磨金色(しまこんじき)に輝き、足元には七宝の蓮華が咲いている。

紫磨金(しまごん)は紫色を帯びた最上質の黄金。紫磨金色(しまこんじき)は紫磨金が放つ黄金の輝き。

阿弥陀仏が諸菩薩と共に光を放ち、上品中生の人を照らすと目を覚まし、紫金台から下り、如来に礼拝して合掌する。

耳に聞こえる音はみな「万物は流転し、空である」と語っている。

七日後に最上の悟りである「阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい)」への仏道を退くことのない者になる。

そして、上品中生の人は十方の諸世界に赴き、諸仏の弟子になって教えを受ける。一小劫(いちしょうこう)の未来に無生法忍(むしょうぼうにん)の境地に至り、諸仏の御前で「必ず未来に仏になれる」と授記される。

劫(こう)は極めて長い時間の単位。サンスクリットのカルパ(kalpa)の音写。

小劫は人間が「8万歳から100年ごとに1歳を減らして10歳になるまでの間」もしくは「10歳から100年ごとに1歳を足して8万歳になるまでの間」のこと。または両方を合わせて一小劫ともするが、一小劫の意味には諸説ある。

上品下生

上品下生(じょうぼんげしょう)は次のような人を指す。

上品下生の対象者

次の人は上品下生に当てはまる。

因果の理法を信じ、大乗の教えを誹謗しない。ただ何よりも無上道心(むじょうどうしん)を発(おこ)した者。

これらの人々がこの発心(ほっしん)の功徳を他の衆生のためにめぐらし、極楽国土に往生したいと願い求めたら往生する。

無上道心はこの上ない至高の悟りのこと。発心は無上道心を発したことを指す。

上品下生の来迎の仕方

阿弥陀仏は観世音菩薩、大勢至菩薩をはじめ、極楽国土の聖衆(しょうじゅ)を従えて来迎する。

阿弥陀仏は五百の分身の姿を化仏として現している。

上品下生の乗り物

上品下生の人の乗り物は金蓮華(こんれんげ)の台

阿弥陀仏の分身の姿である五百の化仏が一斉に上品下生の人に手を差し伸べ、上品下生の人を褒め称え、「あなたは今、清浄にして無上道心を発す。この故にあなたを迎え、極楽浄土に導く。」と宣告すると、上品下生の人はすでに金蓮華台に坐している。

上品下生の人が坐すと金蓮華台の花弁が閉じ、御輿(みこし)のような乗り物になる。

そして阿弥陀仏の後に続き、極楽国土の七宝の池の中に生じる

上品下生の往生後

上品下生の人が花弁が閉じている金蓮華台の中で一昼夜(まる一日)を過ごすと、その花弁が開く。

七日後に極楽国土にいる阿弥陀如来を拝むことができるが、まだ意識がはっきりしていないので、如来の荘厳なさまはうっすらとしか見えない。二十一日後に目や耳がはっきりとする。

耳に聞こえる音はみな尊い仏法を説いている。

そして、上品下生の人は十方の諸世界に赴き、諸仏を供養し、敬いをささげ、諸仏の御前で深い教えを聞く。

三小劫の未来に百法明門(ひゃっぽうみょうもん)の力を得て、歓喜地(かんぎじ)に至る。

百法明門は菩薩が歓喜地で得る法門。百法に深く達する智慧のこと。

歓喜地は菩薩の修行過程の十地(じっち/じゅうじ)の第一地(初地/しょじ)のこと。十地は菩薩五十二位のうち、第四十一位から第五十位までの位にあたる菩薩。

ただし、真言密教の場合、歓喜地は十地の第一地(初地)ではない。真言密教独特の最初の段階になる。詳しくは大日経の住心品(じゅうしんぼん)に説かれる。

中品上生

中品上生(ちゅうぼんじょうしょう)は「戒(かい)を受持(じゅじ)して極楽往生したいと願う人」のこと。

戒は仏教徒が守るべき規則。受持は教えを受けてしっかりと覚えること。

中品上生の対象者

次の人は中品上生に当てはまる。

五戒(ごかい)を固く守り、八斎戒(はっさいかい)を保つ。様々な戒律を守り、五逆(ごぎゃく)の罪がなく、過ちや患いがない。

これらの人々が自分の積み重ねた善根の功徳を他の衆生のためにめぐらし、極楽国土に往生したいと願い求めたら往生する。

五戒とは

五戒は「在家(ざいけ)の仏教信者が守るべき5つの基本的な戒」のこと。

五戒詳細
不殺生戒(ふせっしょうかい)生き物を殺さない
不偸盗戒(ふちゅうとうかい)他人のものを盗まない
不邪婬戒(ふじゃいんかい)よこしまな性行為をしない
不妄語戒(ふもうごかい)嘘をつかない
不飲酒戒(ふおんじゅかい)お酒を飲まない

在家とは、出家せずに普通の生活を送りながら仏道に帰依する者のこと。

五戒の内容は出家者の戒律にも含まれているが、出家者の場合、不邪婬戒は不婬戒(性行為をしない)となる。

目で見る仏教小百科 村越英裕・藤堂憶斗著
目で見る仏教小百科 村越英裕・藤堂憶斗著

八斎戒とは

八斎戒は「在家の仏教信者が毎月決まった日だけ出家者にならって守る規則」のこと。五戒に次の3つが加わる。

八斎戒詳細
不殺生戒(ふせっしょうかい)生き物を殺さない
不偸盗戒(ふちゅうとうかい)他人のものを盗まない
不婬戒(ふいんかい)性行為をしない
不妄語戒(ふもうごかい)嘘をつかない
不飲酒戒(ふおんじゅかい)お酒を飲まない
不得過日中食戒正午以降は食事をしない
不得歌舞作楽塗身香油戒歌舞音曲を見たり聞いたりせず、着飾ったりしない
不得坐高広大床戒高くゆったりした寝台で寝ない

不邪婬戒が不婬戒(性行為をしない)となる。

五逆とは

五逆は「無間地獄(むけんじごく)に堕ちる五種の根本重罪」のこと。

五逆詳細
殺父(せつぶ)父を殺す
殺母(せつも)母を殺す
殺阿羅漢(せつあらかん)阿羅漢(聖者のこと)を殺す
出仏身血(すいぶっしんけつ)仏の身を傷つけて血を出す
破和合僧(はわごうそう)僧の和合を乱し、教団を分裂させる

無間地獄はあらゆる地獄の中で最も悲惨な地獄。時間はあってもないようなもので、絶え間なく責め苦が続く。

中品上生の来迎の仕方

阿弥陀仏は多くの清らかな僧や侍者を従え、金色の光を放ちながら来迎する。

中品上生の乗り物

中品上生の人の乗り物は蓮華台(れんげだい)

阿弥陀仏は「苦・空・無常・無我」の法を説き、「出家の聖者のように衆苦(しゅく)を離れられる」と中品上生の人を祝福する。中品上生の人は歓喜し、気づいた時には蓮華台に坐している。

衆苦は多くの苦しみのこと。

中品上生の人がひざまずいて合掌し、仏に礼拝し、頭を上げると極楽世界に往生している。

中品上生の往生後

すぐに蓮華台の胎の花弁が開き、四諦(したい)の讃えを唱える声が聞こえてくる。

中品上生の人は四諦八正道(したいはっしょうどう)の阿羅漢の道をゆき、「三明(さんみょう)・六神通(ろくじんずう)」を得る。また、八種の三昧(さんまい)により、欲望のとらわれから離れた境地に至る。

八種の三昧は八解脱(はちげだつ)のこと。八解脱は煩悩にしばられて迷っている状態から脱する八種の解脱。この観法を修めて煩悩から離れ、阿羅漢の悟りを得るため「解脱」という。

四諦とは

四諦(したい)は仏教で説く4つの真理のこと。四聖諦(ししょうたい)ともいう。

四諦詳細
苦諦(くたい)人生は苦であるという真理。人は生まれては老い、病にかかり、死んでいく。その四苦から逃れようとするのではなく、背負って生きていく。

四苦は次の通り。
①生苦(しょうく)…生まれてくる苦
②老苦(ろうく)…老いの苦
③病苦(びょうく)…病の苦
④死苦(しく)…死の苦
集諦(じったい)苦の原因についての真理。あらゆる出来事は何らかの原因によって生じる。苦も同様であり、苦を招き集める原因は自分の欲望や煩悩である。
滅諦(めったい)苦の消滅の真理。苦の原因を無くせば、苦を消滅することができる。一切の欲望・煩悩を消すことで苦が消滅する。
道諦(どうたい)苦を滅する方法の真理。その境地に至る方法が八正道(はっしょうどう)である。

八正道とは

八正道(はっしょうどう)は悟りの境地に達する八つの実践法のこと。

八正道詳細
正見(しょうけん)正しいものの見方をすること。自己中心的な見方や偏った見方はしない。
正思惟(しょうしゆい)正しく考えること。自己中心的な考えを捨て、貪瞋痴(とんじんち)の三毒に惑わされない。

①貪(とん)…貪欲(とんよく)・貪(むさぼ)り求める心
②瞋(じん)…瞋恚(しんに)・怒り、憎しみの心
③痴(ち)…愚癡(ぐち)・愚かさ、無知

三毒は人間のもつ根元的な3つの煩悩。仏教で「人間が仏陀になれない要素」を3つの毒と言っている。
正語(しょうご)正しい言葉を使うこと。「妄語(もうご)」「綺語(きご)」「離間語(りけんご)/両舌(りょうぜつ)」「粗悪語(そあくご)/悪口(あっく)」を離れる。

・妄語…うそをつく
・綺語…心にもないことを言う・上辺だけの言葉を使う・お世辞を言う
・離間語/両舌…人の仲を裂く言葉を使う・陰口を言う・二枚舌を使う
・粗悪語/悪口…誹謗中傷する・粗暴な言葉を使う
正業(しょうごう)正しい行いをすること。殺生、盗み、性行為から離れる。不殺生、不偸盗(ふちゅうとう)、不邪婬(ふじゃいん)の3つの徳目を実践する。
正命(しょうみょう)正しく生活すること。道徳に反する仕事はせず、正当な仕事で収入を得て、健全な生活を送る。
正精進(しょうしょうじん)正しく努めること。四種の正しい努力(四正勤/ししょうごん)を実践する。

四正勤は次の通り。
①断断(だんだん)…すでに生じた悪を断つように努める
②律儀断(りつぎだん)…まだ生じていない悪を起こさないように努める
③随護断(ずいごだん)…まだ生じていない善を起こすように努める
④修断(しゅうだん)…すでに生じた善を大きくするように努める
正念(しょうねん)正しく思念すること。四念処(しねんじょ)に注意を向けて雑念を払い、常に自分を見失うことなく、現象にとらわれずに真理を求める心を持つ。

四念処は悟りを得るための次の四種の修行法。
①身念処(しんねんじょ)…身体の不浄を観ずる
②受念処(じゅねんじょ)…感受は苦であると観ずる
③心念処(しんねんじょ)…心は無常であることを観ずる
④法念処(ほうねんじょ)…諸法の無我を観ずる
正定(しょうじょう)正しく精神統一すること。集中力を完成し、安定した境地に入る。

三明・六神通とは

三明(さんみょう)は六神通(ろくじんずう)の宿命通(しゅくみょうつう)、天眼通(てんげんつう)、漏尽通(ろじんつう)の総称。

六神通は次の通り。

六神通詳細
神足通(じんそくつう)望む所に瞬時に移動することができる能力
天耳通(てんにつう)あらゆることを聞き取ることができる能力
他心通(たしんつう)他人の心を知ることができる能力
宿命通(しゅくみょうつう)自身の過去世を知ることができる能力
天眼通(てんげんつう)はるか遠くや未来を見通すことができる能力
漏尽通(ろじんつう)煩悩を無くし、再び迷いの世界に生まれないことを悟る智慧

中品中生

中品中生(ちゅうぼんちゅうしょう)は次のような人を指す。

中品中生の対象者

次の人は中品中生に当てはまる。

一昼夜(まる一日)でも八斎戒(はっさいかい)を受持し、あるいは一昼夜でも沙弥戒(しゃみかい)を持ち、あるいは一昼夜でも具足戒(ぐそくかい)を持ち、威儀(いぎ/威厳のある立ち居振舞い)に欠けるところがない。

これらの人々が持戒(じかい/戒律を守る)の功徳を他の衆生のためにめぐらし、極楽国土に往生したいと願い求めたら往生する。

これらの人々は戒の香りで身が清らかに燻蒸されている。

沙弥戒とは

沙弥戒(しゃみかい)は沙弥(しゃみ)と沙弥尼(しゃみに)が守るべき10個の規則のこと。沙弥は見習いの僧、女子は沙弥尼という。

沙弥戒詳細
不殺生戒(ふせっしょうかい)生き物を殺さない
不偸盗戒(ふちゅうとうかい)他人のものを盗まない
不婬戒(ふいんかい)性行為をしない
不妄語戒(ふもうごかい)嘘をつかない
不飲酒戒(ふおんじゅかい)お酒を飲まない
不著香華鬘不香塗身(ふじゃくこうげまんふこうずしん)化粧をしたり装飾類を身につけない
不歌舞倡妓不往観聴戒(ふかぶしょうぎふおうかんちょうかい)歌舞音曲を鑑賞しない
不坐高広大床戒(ふざこうこうだいしょうかい)高くゆったりした寝台で寝ない
不非時食戒(ふひじじきかい)正午以降は食事をしない
不捉持生像金銀宝物戒(ふそくじしょうぞうこんごんほうもつかい)金銀財産を所有しない

具足戒とは

具足戒(ぐそくかい)は出家修行者の戒。男の僧は250戒、女の僧は348戒ある。

中品中生の来迎の仕方

阿弥陀仏は多くの眷属(けんぞく/従者)を従え、金色の光を放ちながら来迎する。

祝福する阿弥陀仏の声が中品中生の人の耳に響き渡る。

中品中生の乗り物

中品中生の人の乗り物は七宝の蓮華

阿弥陀仏は「あなたは善人である。あなたは三世諸仏(さんぜしょぶつ)の教えに従った。この故にあなたを迎え、極楽浄土に導く。」と中品中生の人を祝福する。

三世諸仏は「過去・現在・未来」の三世に渡って存在する一切の仏のこと。

中品中生の人が自分を見た時には蓮華の上に坐している。そして蓮華の花弁が閉じ、極楽国土の宝池の中に生じる。

中品中生の往生後

中品中生の人が花弁が閉じている蓮華の中で7日過ごすと、その花弁が開く。

目を開き、合掌して阿弥陀仏を称賛し、尊い教えを受けて心から喜び、聖者の最初の位である須陀洹(しゅだおん)に至る。

そして半劫の未来に聖者の最高位の阿羅漢になる。

中品下生

中品下生(ちゅうぼんげしょう)は次のような人を指す。

中品下生の対象者

次の人は中品下生に当てはまる。

男女問わず、両親に孝行し、世間に徳高く人々を思いやり、深くめぐみをかけた者。

これらの人々が仏の教えとは縁なく過ごしてきたとしても、臨終の時に仏道へ導く人(善知識/ぜんちしき)と出会い、「阿弥陀仏の国土の安らぎ」や「阿弥陀仏が法蔵菩薩(ほうぞうぼさつ)の時に立てた四十八願(しじゅうはちがん)」のことを聞いたとする。

このことを聞いてから命を終えれば極楽国土に往生する。

中品下生の来迎の仕方

中品下生の来迎の記述なし。

阿弥陀仏の国土の安らぎや四十八願のことを聞いてから命を終えれば、「健康な男が腕を屈伸するくらいの短い時間に極楽国土に往生する」とある。

中品下生の乗り物

中品下生の乗り物の記述なし。

中品下生の往生後

中品下生の人が花弁が閉じている蓮華の中で7日過ごすと、その花弁が開く。

観世音菩薩と大勢至菩薩に拝して尊い教えを受け、一小劫(いちしょうこう)の未来に阿羅漢になる。

下品上生

下品上生(げぼんじょうしょう)は次のような人を指す。

下品上生の対象者

次の人は下品上生に当てはまる。

大乗経典を誹謗することはなくても、様々な悪にとらわれて多くの悪事を行い、その悪事を反省して心から恥じることがない者。

これらの人々が臨終の時に仏道へ導く人(善知識/ぜんちしき)がいて、種々の大乗経典の経題を唱えてくれたら、諸経の名を聞くだけで、その功徳により千劫(せんごう)の極重(ごくじゅう)の悪行が除かれ、消し去られる。

極重は極めて重いこと。仏は深く悪と愚かさに染まった人々にも救いの手を差し伸べる。

また、合掌して南無阿弥陀仏と唱えれば、五十億劫の未来に渡って生死を重ねる罪が除かれ、極楽国土に往生する。

下品上生の来迎の仕方

阿弥陀仏は自身の化仏、そして観世音菩薩と大勢至菩薩の化身を下品上生の人の前に遣わす。

下品上生の乗り物

下品上生の人の乗り物は宝蓮華(ほうれんげ)

阿弥陀仏の化仏は「善き人よ。あなたは仏名を唱えた。この故に諸罪は消滅した。あなたを迎え、極楽浄土に導く。」と下品上生の人を祝福する。

祝福されると、下品上生の人は化仏の光明の輝きが室内に満ちるのを見る。

そして宝蓮華に乗って化仏の後に続き、極楽国土の宝池の中に生じる。

下品上生の往生後

下品上生の人が花弁が閉じている蓮華の中で49日(7週)過ごすと、その花弁が開く。

観世音菩薩と大勢至菩薩が大光明を放ちながら下品上生の人の前にとどまり、深く尊い十二部経 (じゅうにぶきょう)を説く。それを聞き、信じて理解し、下品上生の人は菩提心(ぼだいしん)を発(おこ)す。

菩提心は悟りを求める心。

そして十小劫の未来に百法明門(ひゃっぽうみょうもん)の力を得て、歓喜地(かんぎじ)に至る。

下品中生

下品中生(げぼんちゅうしょう)は次のような人を指す。

下品中生の対象者

次の人は下品中生に当てはまる。

五戒・八戒及び具足戒を犯す者。寺・教団のものや僧に布施されたものを盗み、不浄の説法をする。悪事を反省して心から恥じることがないどころか、悪行を自慢し、悪事で自分を飾り立てる。

これらの罪深い人々が命を終える時には、その悪業ゆえに地獄の炎が燃え盛って迫ってくる。

しかし、仏道へ導く人(善知識/ぜんちしき)がいて、阿弥陀仏の十力威徳(じゅうりきいとく)・光明神力(こうみょうじんりき)・五分法身(ごぶんほっしん)を聞くことがあったとしたら、八十億劫の生死の罪が除かれ、極楽国土に往生する。

十力威徳とは

十力威徳(じゅうりきいとく)は如来がもつ10種の力の徳のこと。

十力詳細
処非処智力(しょひしょちりき)道理と非道理を明確に知る力
業異熟智力(ごういじゅくちりき)業とその報いとの因果関係を知る力
静慮解脱等持等至智力(じょうりょげだつとうじとうしちりき)三昧や解脱を知る力
根上下智力(こんじょうげちりき)衆生の能力の優劣を知る力
種種勝解智力(しゅじゅしょうげちりき)衆生の本当の望みを知る力
種種界智力(しゅじゅかいちりき)衆生が有する本質を知る力
遍趣行智力(へんしゅぎょうちりき)衆生が地獄や涅槃など様々な所に赴く因果を知る力
宿住随念智力(しゅくじゅうずいねんちりき)自他の過去世を知る力
死生智力(ししょうちりき)衆生の死生や来世の境遇を知る力
漏尽智力(ろじんちりき)涅槃に到達するための手段を知る力

光明神力とは

光明神力(こうみょうじんりき)は阿弥陀仏の光明の力のこと。

五分法身とは

五分法身(ごぶんほっしん)は「戒(かい)・定(じょう)・慧(え)・解脱(げだつ)・解脱知見(げだつちけん)」のこと。

「戒律を保ち、深く禅定に入り、智慧の明るみに開かれ、あらゆる煩悩から解放され、解脱の安らぎを知る」という、仏や阿羅漢がもつ5つの功徳。

下品中生の来迎の仕方

下品中生の人の八十億劫の生死の罪が除かれると、地獄の猛火は清涼の風となり、天界の花々が空中に舞う。

その一枚一枚の花弁に仏と菩薩の化身がましまし、下品中生の人に手を差し伸べて迎える。

そして下品中生の人は一瞬のうちに七宝池の中の蓮華の胎内に往生する。

下品中生の乗り物

下品中生の乗り物の記述なし。

下品中生の往生後

下品中生の人が花弁が閉じている蓮華の中で六劫の長い時を過ごすと、その花弁が開く。

観世音菩薩と大勢至菩薩は下品中生の人を慰めて安らぎを与え、深く尊い十二部経を説く。下品上生の人がそれを聞くとすぐに菩提心を発す。

下品下生

下品下生(げぼんげしょう)は次のような人を指す。

下品下生の対象者

次の人は下品下生に当てはまる。

最も不善の行いである五逆・十悪(じゅうあく)の罪を犯し、その悪業のゆえに地獄・餓鬼・畜生の三悪趣(さんあくしゅ)の世界に堕ちるべき者。

これらの悪と愚かさに染まった人々は、その悪業のゆえに、死後は地獄・餓鬼・畜生の三悪趣(さんあくしゅ)の世界に堕ちて生死を繰り返し、果てしなく長い時間が経ったとしてもその世界から逃れることができず、極度に苦しみ続ける。

しかし、これらの人々が臨終の時に仏道へ導く人(善知識/ぜんちしき)がいて、尊い仏法を聞き、阿弥陀仏の念仏を教わったとする。

五逆・十悪の不善に馴染んだ人々は臨終の苦しみがひどく、仏を念じることができないが、心を込めて声を絶やさず、そして十念欠けることなく南無阿弥陀仏と唱えたとしたら、一念を唱えるごとに八十億劫の生死の罪が除かれ、極楽国土に往生する。

十悪とは

十悪は十善戒(じゅうぜんかい)を破って犯す悪行のこと。

十悪詳細
殺生(せっしょう)故意に生き物を殺す
偸盗(ちゅうとう)他人のものを盗む
邪淫(じゃいん)よこしまな性行為をする
妄語(もうご)嘘をつく
綺語(きご)心にもないことを言う
悪口(あっく)誹謗中傷する
両舌(りょうぜつ)人の仲を裂く言葉を使う
慳貪(けんどん)激しく貪(むさぼ)り求める心を抱く
瞋恚(しんい)激しい怒りを抱く・激しく憎む
邪見(じゃけん)誤った見解を持たない

十悪は三業(さんごう)が作る十種の罪悪。三業は人間が持つ「身(身体)・口(言葉)・意(心)」の三種類の活動。「身業(しんごう)・口業(くごう)・意業(いごう)」という。

殺生・偸盗・邪淫が身業による悪で身三(しんさん)、妄語・綺語・悪口・両舌が口業による悪で口四(くしい)、慳貪・瞋恚・邪見が意業による悪で意三(いさん)という。

下品下生の来迎の仕方

下品下生の来迎の記述なし。

下品下生の乗り物

下品下生の人の乗り物は金蓮華

南無阿弥陀仏と唱えた下品下生の人は、命を終える時に太陽のように輝く金蓮華を見る。それが下品下生の人の前の空中に浮かび、一瞬のうちに極楽世界に往生する。

下品下生の往生後

下品下生の人が花弁が閉じている金蓮華の中で十二大劫の長い時を過ごすと、その花弁が開く。

観世音菩薩と大勢至菩薩は下品下生の人に大悲の音声で諸法実相(しょほうじっそう)を説き、罪を除いて滅する除滅罪法(じょめつざいほう)を説く。

下品下生の人がそれを聞くと菩提心を発す。

諸法実相は万物の真実の姿のこと。

九品来迎印

九品往生のパターン(等級)により、阿弥陀仏が極楽浄土から迎えにくる時に結んでいる印(印相)が異なります。

これを九品来迎印(くほんらいごういん)といい、上品が定印(じょういん)、中品が転法輪印(てんぽうりんいん)、下品が来迎印(らいごういん)となり、上生は親指と人差し指、中生は親指と中指、下生は親指と薬指で輪を作ります。

九品来迎印
九品来迎印

この九体の阿弥陀仏を九品仏(くほんぶつ)や九体仏(くたいぶつ)という。

寺によっては定印を上生、転法輪印を中生、来迎印を下生とし、親指と人差し指で輪を作るのを上品、親指と中指で輪を作るのを中品、親指と薬指で輪を作るのを下品にあてる九品仏もある。

それぞれの印について1つずつ見ていきましょう。

ただし、観無量寿経には九品来迎印については書かれていません。あくまで参考程度にしてください。

古くは平安時代、法成寺(ほうじょうじ)阿弥陀堂や浄瑠璃寺(じょうるりじ)に九品仏が祀られて各地に広まった。

浄瑠璃寺の中尊は来迎印、他の八体は定印を結んでいて、九品来迎印の九種類の印には当てはまらない。古くは印の違いを重視していなかった説がある。

定印|上品

上品の人々を迎えにくる時に阿弥陀仏が結んでいる印(印相)は定印(じょういん)です。

九品往生詳細
上品上生親指と人差し指で輪を作った定印
上品中生親指と中指で輪を作った定印
上品下生親指と薬指で輪を作った定印
阿弥陀如来坐像(定印)
阿弥陀如来坐像(定印)
詳細
阿弥陀定印腹の前で両手の手のひらを重ね、親指と人差し指で輪を作る。極楽浄土にいる阿弥陀如来を表す印。妙観察智印(みょうかんざっちいん)ともいう。

転法輪印|中品

中品の人々を迎えにくる時に阿弥陀仏が結んでいる印(印相)は転法輪印(てんぽうりんいん)です。

九品往生詳細
中品上生親指と人差し指で輪を作った転法輪印
中品中生親指と中指で輪を作った転法輪印
中品下生親指と薬指で輪を作った転法輪印
木造阿弥陀如来坐像
木造阿弥陀如来坐像
詳細
転法輪印両手を胸の前にあげ、親指と他の指で輪を作る。釈迦が説法した時の姿を表す。

転法輪印は如来が説法する時の印。法輪(仏の教え)で煩悩を祓い、身心を清めることを示す。説法印(せっぽういん)ともいう。

来迎印|下品

下品の人々を迎えにくる時に阿弥陀仏が結んでいる印(印相)は来迎印(らいごういん)です。

九品往生詳細
下品上生親指と人差し指で輪を作った来迎印
下品中生親指と中指で輪を作った来迎印
下品下生親指と薬指で輪を作った来迎印
阿弥陀如来坐像
阿弥陀如来坐像
詳細
来迎印右手を胸の前に構え、指を上に向け、手のひらを前に向け、親指と他の指で輪を作る。左手を腹の高さに構え、手を下げて指を下に向け、手のひらを前に向け、親指と他の指で輪を作る。阿弥陀如来が極楽浄土から往生者を迎えに来る時の印。

 まとめ

この記事があなたの参考になれば幸いです。

園善博

園 善博|この記事を書いた人

京都出身の速習法インストラクター。経営の神様と呼ばれた松下幸之助など数多くの有名企業が神仏に祈念しているのを見て「目に見えない運気を高めることが成功につながる」と考え、独立してから風水や西洋魔術、神道、真言密教、陰陽道など、多岐に渡るジャンルを先生に師事し、15年以上学ぶ。独自の「速習法」や「勉強法」を公開した書籍は10冊を超え、講師歴12年で10,000名以上の受講生を輩出。→プロフィール詳細へ

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